エホバの証人は楽園での永遠の命という希望を伝えると共に、来るべきハルマゲドンについても人々に警告します。人類未曾有の出来事になるハルマゲドンについてエホバの証人はどのようなことを信じているのでしょうか?

そして誰が救われるのかという問いに対してどのような考えを持っているのでしょうか?

ものみの塔出版物の中に掲載されている事柄から調べてみましょう。

 

自分たちだけが救われるとは信じていません

エホバの証人に「自分たちだけ救われると信じているのですか」と尋ねるなら、恐らく「いいえ」という答えが返ってきます。それは「エホバの証人―どんな人たちですか」と題するブロシュアーの模範解答がそのように答えているからです。

*** エ 29ページ 関心を持つ人たちが彼らについてしばしば尋ねること ***
証人たちは自分たちだけが救われると信じているのですか。
いいえ。これまで幾千年もの過去に生きた,エホバの証人でない無数の人々も復活してきて命を得る機会を持つはずです。また,今日生きている人々の中にも,今後,「大患難」の到来する以前に真理と義の側に立場を定める人々が多くいるでしょう。そうした人々も救いを得ます。さらに,イエスは,互いを裁くべきではない,と言われました。わたしたちはうわべを見るきらいがありますが,神は心をご覧になります。神は正確に判断され,憐れみをもって裁かれます。神は裁きをわたしたちにではなく,イエスの手にゆだねました。―マタイ 7:1‐5; 24:21; 25:31。

救われるのはエホバの証人だけです

前述の引用文を見ると、ものみの塔は「人を裁くのをやめなさい。あなた方が裁いているその裁きであなた方も裁かれることになるからです」と述べる参照されている聖句の言葉を当てはめて証人以外の人を裁いていないように思えます。しかし次の「ものみの塔研究記事」の文面を見るならば実際の組織の公式見解を明確な言葉で理解することができます。

*** 塔76 3/15 181ページ 5節 是認されて神の新秩序に入る人々 ***
しかしその大患難は,わたしたちにも同じく,神に対する信仰と献身の最大の試みをもたらすものとなるでしょう。この試みを首尾よく通過するエホバのクリスチャン証人だけが生き残り,火で精錬された金のように出て来て,神の貴重な新秩序において神に用いられるのです。

*** 塔89 9/1 19ページ 7節 生き残って千年期に入るため,組織された状態を保つ ***
エホバの証人だけが,つまり至上の組織者の保護のもとで一つに結ばれた組織となっている,油そそがれた残りの者と「大群衆」の人々だけが,悪魔サタンの支配する,滅びに定められたこの体制の差し迫った終わりを生き残るという聖書的な希望を抱いています。(啓示 7:9‐17。コリント第二 4:4)

大患難を生き残るのはエホバの証人だけです。それはつまり、エホバの証人以外の残りの人類はすべて抹殺されます。その殺戮はどれほどの規模になるのでしょうか?現在世界人口は約70億人です。世界には700万人ほどのエホバの証人がいますので、ハルマゲドンの際に69億9300万人の人類が抹殺されることになります。

滅びを嘆く者は一人もいません

彼らが抹殺される際に、その滅びを嘆くエホバの証人は一人もいません、と過去の「ものみの塔」は述べています。

*** 塔77 9/1 537ページ どんな人の死を悼み,葬式をしますか ***
今の世代は,間近い将来に,現在のこの邪悪な体制を終結させる,予告された「大患難」を目の当たりにするでしょう。(マタイ 24:21)その時地上に生き残るのはエホバの忠実なしもべたちだけですが,彼らの中で邪悪な者たちの滅びを嘆く者は一人もいないでしょう。それとは反対に,ちょうどモーセとその民がファラオとその軍勢の滅びを見て喜んだと同様に,生き残ったしもべたちも邪悪な者たちの滅びを喜ぶでしょう。

上記の考えの通りであれば、ハルマゲドンの際、69億人の人類が次々と殺りくされていく様子を見て、エホバの証人は喜ぶことになります。邪悪なファラオの軍勢が滅ぼされたときと同じような状況です。それはちょうど2001年9月11日にツインタワーが崩壊し無実の米国人が死んでいく様子を歓喜をもって見ていたビンラディン氏と同じような気持ちなのかもしれません。

しかし1990年には「ものみの塔」は180度考えを変えて次のようなコメントを残しています。

*** 塔90 4/15 20ページ 15節 新しい世へ救出されるための備えをしなさい ***
邪悪な者たちの滅びは,エホバにもエホバの僕たちにも喜びをもたらしません。

小さな子どもたちを含めて老若男女をことごとく殺せ

 

ハルマゲドンの際に、小さな子どもたちはどうなるのでしょうか?

この点は、邪悪なことを何も行わず聖書を学ぶ機会もない子どもの立場を考えると、疑問に思うのはとても自然なことだと思います。

子どもたちの行く末については、ものみの塔は何の疑いもなく次のように断言します。

 

ものみの塔1968年5月15日号 300頁
この事物の制度は、ハルマゲドンにおいて正義の神と最終的に対決することを迫られています。その時がまぢかいことは、すべての証拠に照らして明らかです。「額にしるし」、つまり神の道徳の基準に対する正しい認識を持たない親と子供は、そのままではすまされません。親は子供に対する責任を問われ、子供は親の怠慢のために生き延び得ないでしょう。預言者は、刑を執行する天使に与えられた次の命令を聞きました。「あわれむな。老若男女をことごとく殺せ……(わたしは)彼らの行うところを、彼らのこうべに報いる」 -エゼキエル 9:4-6,10。

そのような酷い殺戮を神が現代において行われるのだろうかと疑問に感じますか?ものみの塔1986年 3月15日号 19ページには、神を憐れみ深い方と考え、神が「それほど多くの人々を大患難で死なせることは絶対にないと」感じる人について言及されています。そのような人は反対者に惑わされている人として一蹴されています。

愛の神は幾十億人も復活させてくださいます

愛のある神は過去になくなった幾十億の人たちを復活させてくださいます。それにより大患難を生き残ったエホバの証人はかつて亡くした愛する家族と再会することができるのです。

*** 塔89 6/15 7ページ 『わたしたちは彼らが復活の際によみがえることを知っています』 ***
復活の希望に対するあなたの反応はどうですか。エホバは約束どおり,死んでいる人々を幾百万人,いや幾十億人も復活させてくださるでしょう

*** 崇 9章 70ページ 1節 復活の希望の力 ***
エホバは過分の親切を示して,これまでに死んだ何十億もの人々のためにとこしえの命を享受する貴重な機会を開かれました。その結果,わたしたちも死んで眠っている愛する人たちと再会する心温まる希望を抱いているのです。―マルコ 5:35,41,42; 使徒 9:36‐41と比べてください。

大患難で滅ぼされる幾十億の人は復活しません

一方ハルマゲドンが到来するまでにエホバの証人にならなかった人は滅ぼされ永遠に消滅します。

*** 塔90 4/15 20ページ 14節 新しい世へ救出されるための備えをしなさい ***
その点を明確に示しているのが,ユダ 7節です。そこにはこう記されています。「ソドムとゴモラおよびその周りの都市も,……永遠の火による司法上の処罰を受け,警告の例としてわたしたちの前に置かれています」。そうです,由々しい罪を犯したそれらの都市の人々の滅びがとこしえにわたるものであったのと同様,現在の邪悪な体制の終わりに邪悪な人々に臨む滅びも,とこしえにわたるものなのです。(マタイ 25:46)

しかし救済策がないわけではありません。愛ある神は、大患難前に死ぬことができた人の多くを復活させてくださいます。

*** 塔93 5/15 31ページ 読者からの質問 ***
大患難前の宣べ伝える業が行なわれている間に亡くなった人々の中で復活させられる人は少なくないでしょう。

チャールズ・テイズ・ラッセルの考え方

ものみの塔協会の創設者とされているC.T.ラッセルは自分たちのことを「聖なる者」あるいは「聖別された者」として近いうちに天に取り去られて特別な祝福を受けると考えていました。しかし人類の救いについては現在のエホバの証人とは異なる意見を持っており、自分の宗教に属さない残りの人類をキリストが抹殺するというような考えに対して強い不快感を示しています。

シオンのものみの塔1879年7月号
我々はこう考えます。もしキリストの再来が矯正期間の終わりで、かつ後戻りできない滅びを人類の100人中99人の人にもたらすようなものであれば、それはどう考えても望ましいものではなく、まして我々がふさわしい精神で「主イエスよ、すぐに来てください」などと祈れるものではありません。

*** 告 5章 45ページ 主の再来をふれ告げる(1870‐1914年) ***
それに加えて,イエスの再来はすべての人を滅ぼすためではなく,地上の従順な家族を祝福するためのものであることを悟りました。(ガラテア 3:8)ラッセルはこう書いています。「我々は,アドベンティスト派の間違いをはなはだ残念に思った。彼らは,肉体を着けたキリストを期待し,アドベンティスト派以外の世界とその中にあるものすべてが燃え尽きてしまうと教えていた」。

J.F.ラザフォードの指導のもとで人類の救いは徐々に狭められていきます。しかし少なくとも1923年には、イエスのたとえ話の羊(マタイ25章)はハルマゲドンを生き残る謙遜な教会員(WT1923 10/15 p.313)であるとして現代のエホバの証人よりは柔軟な見方を見せています。しかし1930年代を経て現在見られるような「エホバの証人以外は大患難で滅ぼされる」という考えに落ち着きます。

チャールズ・テイズ・ラッセルが現代のエホバの証人の組織を見たらどのように感じるのでしょうか?もしかしたらハルマゲドンで神が人類を抹殺する様子を描いた雑誌の挿絵には吐き気を催すかもしれません。(*1)

(*1)ラッセルは1874年から1914年までの間に社会的無秩序状態が増大していくだろうと考えました。しかし彼はそれを神による裁きとは考えませんでした。

 

 

 

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