VAT 4956
協会は今回の記事で天体観察日誌の VAT 4956 を自分たち側の「証拠」のようにして採用しました。この VAT 4956 はかつて協会自身が信頼できないものとして退けていたものです。(目72 7/8 29ページ)
記事は「研究者たちは、月の位置に関する記述が非常に信頼できるので、VAT 4956 に見られるそれら月の一連の13の観測結果を注意深く分析してきました。」と述べてから、協会の主張する年として「13のすべてがぴったり一致した」と主張しています。協会が信頼できない資料としてきた VAT 4956 が「非常に信頼できるので」という言葉で格上げされているのはさておき、この「研究者たち」とはいったい誰なのでしょうか?他の部分では権威者の名前をあげ自分たちの主張に権威づけをしようとしてきたところからするといかにも不自然です。そして「13のすべてがぴったり一致した」と言えるほど画期的な発見があったのであれば詳細な調査結果を載せるのが自然でしょう。
この主張の正当性に関しては独自の調査を行った人の計算結果が以下のアドレスに記載されていますので参考にすることをお勧めします。結果は「すべてがぴったり一致した」という内容とは異なるものです。そして結果の内訳が明確に記載されています。
Do All 13 Sets Of Lunar Positions On VAT 4956 Fit The Year 588/587 B.C.E.?
http://www.jehovahs-witness.net/watchtower/bible/216051/1/Do-All-13-Sets-Of-Lunar-Positions-On-VAT-4956-Fit-The-Year-588-587-B-C-E
測定結果は以下のようになります。表の左側がものみの塔の主張する年、右が一般的な年になります。
月の13観測データの処理結果概要:
588/87 |
568/67 |
|
---|---|---|
Nisanu 1 | 一部良い | とても良い |
Nisanu 9 | とても良い | 悪い |
Ayyaru 1 | 一部良い | とても良い |
Simanu 1 | 一部良い | とても良い |
Simanu 5 | 悪い | 悪い |
Simanu 8 | 悪い | とても良い |
Simanu 10 | 悪い | 不正確? |
Sabatu 1 | 一部良い | とても良い |
Sabatu 6 | 悪い | とても良い |
Sabatu 11? | 特定不能 | 特定不能 |
Addaru 1 | だいたい良い | とても良い |
Addaru 2 | 悪い | とても良い |
Addaru 7 | とても良い | とても良い |
総合成績:
588/87 |
568/67 |
|
---|---|---|
とても良い |
2 |
9 |
だいたい良い |
1 |
– |
一部良い |
4 |
– |
不正確? |
– |
1 |
悪い |
5 |
2 |
特定不能 |
1 |
1 |
ものみの塔が主張する「13のすべてがぴったり一致した」データがどのようなものなのかは明らかにされていませんが、ものみの塔の言う「研究者」が Rolf Furuli(自身がエホバの証人)であるならば、この研究者の主張はカール・オロフ・ジョンソンによって詳細にわたり反論されていますので、そちらもご覧ください。
A critical review of Rolf Furuli’s 2nd volume on chronology
http://kristenfrihet.se/kf2/review.htm
特集ページ目次
- 特集1 – ものみの塔2011年10月号
- 特集2 – ものみの塔2011年11月号
- VAT4956 – 月の一連の13の観測結果に関する補足
- 特集3 – 弁護士のように
- 特集4 – VAT4956
- 特集5 – 目ざめよ誌2012年6月号
- 歴史1 – 間違いの原点 – C.T.ラッセル
- 歴史2 – 確信の根拠 – J.F.ラザフォード
- 歴史3 – 思い込み – J.F.ラザフォード
- 歴史4 – 根拠のない年代調整
- 歴史5 – 不誠実な記載
- 結論1 – 明確な新バビロニアの歴史
- 結論2 – 極めて客観的な証拠
- 結論3 – 誤解された聖句