客観的なカウント方法  δ18Oの値

別の記事「地球規模の洪水はなかった-氷床は語る」の中で数十年の調査の結果、地球規模のノアの大洪水は完全に否定されてしまったという点を指摘しました。ここではそれらのデータがどのくらい客観的なものなのかを示したいと思います。

前の記事では氷床の年代は歴史に記録されている火山噴火の痕跡と照合することができるという点を紹介しました。しかし単独でも客観的で正確な年代のカウントを行うことができています。その一つの方法は氷床の中の酸素同位体の比率を使ったカウントです。酸素同位体には18Oと呼ばれるものがあり、周辺海域や陸地の気温が低いときは18Oは多く失われ、降り積もる雪の18O同位体の比率(δ18O)の値は少なくなります。逆に夏の時期に降る雪の中では18Oが多く含まれるようになります。下のグラフでは谷になっている部分の紫の帯の縦の破線の部分が冬を表しています。この1年周期のシグナルを確認することで掘り出した氷床の年代を正確にカウントすることができます

下のグラフ:10メートルの間に19の年縞(ねんこう)を確認できる。

このグラフはグリーンランドのCrêteの氷床のδ18Oの変動の一部をグラフ化したものです。Crêteの場合は404メートル掘り進められ、およそ15世紀分、西暦534年までの氷床のサンプルがとられています。Crêteは表面は1年分の雪が70㎝ほど降り積もり、100メートルほど進むと1年分の雪は20㎝ほどに圧縮されています。このように十分な積雪量を記録している場所ではδ18Oの値測定によって正確に毎年のレイヤーを識別することができます。

DYE-3 過去8000年前まで正確にさかのぼる

例えばグリーンランドのDYE-3という場所では表面では1メートルほどの雪が積もるため、δ18Oの値で年代をカウントする十分な条件が揃っています。実際、DYE-3 では8000年分の深さまで安定同位体のデータによってレイヤーが識別できています(*1)。以下のグラフはグリーンランドのDYE-3(先ほど8000年分までほぼ正確に年代をたどれると指摘した場所)の1年毎の氷床の厚さをグラフにしたものです。(*2)

エトナ火山噴火からノアの大洪水までさかのぼると氷床の厚さは規則性をもって圧縮されていきます。表面近くは1メートルほど積もっている雪は100メートルの深さになると半分の50㎝になります。そしてBC425年は深さ924メートルになり1年分の厚みは27㎝です。さらにBC2370年は深さ1367メートルになり15㎝の厚みになります。アダムが創造されたとされているBC4026年(ものみの塔による)は深さ1558メートルの地点になります。しかしどこにも大洪水を示す跡はありません

神が証拠を隠蔽したのか?

このようにグリーンランドや南極での氷床の研究はノアの時代の大洪水を明確に否定しています。地球規模の洪水が起きながらグリーンランドや南極の氷床に洪水の跡を何も残さないということはあり得ません。

洪水の規模と破壊的な影響について、ものみの塔がどのように描写しているか見てみましょう。彼らは以下の記述にあるように世界中に「巨大な激浪が荒れ狂い」、グランドキャニオンのような大峡谷が「何日かのうちに」できたと述べているのです。

ものみの塔1968年10月15日p613

グランドキャニオンのような1200メートルもある地層と渓谷が「何日かのうちに生じ」、世界中を「巨大な激浪が荒れ狂い」ながら、グリーンランド、そして南極だけに証拠が残らないように隠ぺいしたと本当に信じられますか?

記事の終わり

*1 Centre for Ice and Climate – コペンハーゲン大学 – 「安定同位体データによる氷床コアの年代確定について」

*2(データは米国 NOAAサイトの gicc05-holocene-20yr.txt を利用)