エホバの証人レッスン

信仰の枠を超えた真理の探究

グランドキャニオンはノアの時代にできたものではない

エホバの証人の主張

エホバの証人は紀元前2370年に全地を水で覆う大洪水が起き、ノアの家族と箱舟に入った全種類の動物のつがい以外はすべての動物が滅んだと信じています。そしてグランドキャニオンのような大峡谷も数日のうちに出来たと述べています。彼らがグランドキャニオンの地層全てを含めてすべてがノアの洪水で出来たと信じているかどうかは言及がありませんが、引用されている書籍が「若い地球創造論者」の出版物であることを考えると、大よそ他のプロテスタントの「若い創造論者」と同じことをグランドキャニオンに関しても主張していると考えられます。一例として1968年のものみの塔の説明を見てみましょう。

ものみの塔1968年10月15日p613

「何日かのうちに・・荒れ狂う激流は深い渓谷や大峡谷を掘りました。」

 

事実はどうか

すでに「ノアの時代に気象の激変はなかった」の中でも指摘している通り、グランドキャニオンのような1200メートルもある地層と渓谷が「何日かのうちに生じ」、世界中を「巨大な激浪が荒れ狂い」ながら、グリーンランドや南極の氷床に何の痕跡も残さないでいられることはあり得ません。

グランドキャニオンは先カンブリア時代からペルム紀までの地層が重なる峡谷であり、ノアの洪水とは全く関係がありません。現在のロッキー山脈の東側は古代において浅い海が広がっていたエリアで、そこでは海進と海退が繰り返されていました。

図:白亜紀後期のアメリカ 浅い海が広がっていた

参考:http://www2.mcdaniel.edu/Biology/wildamerica/WApinyonpine/ppstrata1.html

このような地理的条件がそろっていたためにグランドキャニオン周辺の独特な地層が形成されています。地層を形成する原因として”洪水”も大いに関係していますが、1200メートルを超える地層の重なりは一度の洪水ではできません。なおグランドキャニオンは17億年から2億4,500万年前までの地質年代を網羅しており、コロラド川の浸食によって峡谷が形成されるにはさらに300万年以上が経過していると考えられています。

エホバの証人はグランドキャニオンのような渓谷が「何日かのうちに生じ」「荒れ狂う激流は深い渓谷や大峡谷を掘った(ものみの塔1968年10月15日p613)」と主張します。

しかし以下の写真からわかるようにコロラド川は蛇行するラインをとっており、荒れ狂う激流で出来るような直線的な流れではありません。この情景はむしろ300万年以上の長い年月をかけて川の浸食によって形成されたという科学的な見解と一致しています。もし一度の洪水でグランドキャニオンの地層が出来たのであれば、あらゆる低地で同じような地層が出来上がっているはずです。

地質学では何が明らかになっているか

日本地質学会のQ&Aのコーナーでは以下のような質問と率直な答えが掲載されています。

Q31:グランドキャニオンとノアの大洪水は関係するの?

A:まったく関係はありません。

ノアの洪水というのは、キリスト教の聖書に出てくる概念で、実際におこった現象ではありません。グランドキャニオンの形成とノアの洪水はまったく関係はありません。

(瀬戸口烈司 京都大学名誉教授)

日本地質学会Q&A「Q31:グランドキャニオンとノアの大洪水は関係するの?」

参考:http://ja.scenic.com/visitor-information/grand-canyon/geology

 

記事の終わり

 

前へ

「見よ!」のブロシュアーの引用は不正

次へ

創世記の筆者はオーストラリア大陸の存在を知らなかった

1 コメント

  1. KHAN

    渓谷の形成と地層の形成を別にして考えることが必要です。地層が広大な規模でしかも水平に存在するのはその時、水が無ければ形成されることは無い。言われる通り川の氾濫で有れば低い場所に堆積し、地層に均等性は見られない。

コメントを残す

エホバの証人レッスン