はじめに

2015年4月13日、コンティ裁判の控訴審の判決が出ました。控訴審の判決文は以下の裁判所のサイトからダウンロードすることができます。

http://www.courts.ca.gov/opinions/documents/A136641.PDF

記事の作成にあたって黄色いマーカーをつけたドキュメントは以下の場所に置いています。
2015.04.13 控訴審判決文(マーカー書き込みあり)

今回の判決の趣旨は1ページと2ページにまたがる部分に記載されています。

appeal_decision_p.1and2

控訴審 判決文 ページ 1~2

「我々はケンドリックが児童を虐待していたことについて会衆あるいはコンティの両親に警告する義務を被告に課すことは支持しない。しかしながら、被告はケンドリックの「野外奉仕」つまり教会が主宰して家から家に成員が地域伝道を行う活動に参加することに関して制限や監督を怠ったことで責任があるという点は支持することができる。ケンドリックは監督されないまま野外奉仕の間にコンティに接近することができたのであり、それが彼女を虐待する機会として用いられている。 ものみの塔に対する懲罰的賠償金を課す唯一の根拠として警告義務への違反が掲げられていたのであるから、我々は判決の中のこの部分、つまり、ものみの塔に対する懲罰的賠償金を課す判決を破棄する。 補償的賠償については肯定する。」

 

賠償金について

ものみの塔にかかる賠償額に関しては、以下の表の中の赤い部分が破棄され、黄色い部分は控訴審でも確定しています。

補償的損害賠償の算出

療養損害 $13,000
その他損害 $6,870,000
合計 $7,000,000

補償的損害賠償の責任比率

比率 賠償額
ケンドリック 60% $4,200,000
ものみの塔 27% $1,890,000
ノースフリーモント会衆 13% $910,000
合計 100% $7,000,000

懲罰的賠償金

陪審員の決定 $21,000,001
裁判所による減額後 $8,610,000

 

統治体の信者向けメッセージと裁判での主張との食い違い

統治体の成員のスティーブン・レットは JWブロードキャスティングの中で次のように述べました。

「わたしたちが一致に貢献できるもう一つの方法は、偽りの話を退けることです。それはエホバの組織からわたしたちを引き離すために意図的に作られたものです。例えば、背教者によって作り出された嘘と不誠実な話を考えてみましょう。エホバの組織は小児性愛者を大目に見ているというのです。つまり、そんなことは馬鹿らしい話ですよね?
若者に対して脅威となる者に立ち向かったり若者を保護する行動をとるのがエホバの組織です。わたしたちはそのような嘘をきっぱりと退けます。」

「Another way we can contribute to the oneness – rejecting false stories that are designed to separate us from Jehovah’s organization. As an example, think about the apostate-driven lies and ‘dishonesties’ that Jehovah’s organization is permissive toward pedophiles. I mean, that is ridiculous, isn’t it?

If anybody takes action against someone who would threaten our young ones, and takes action to protect our young ones, it’s Jehovah’s organization. we reject outright such lies」

http://tv.jw.org/#video/VODProgramsEvents/pub-jwbmw_E_201502_5_VIDEO
7:36付近

しかし、控訴審の判決文はレット氏の主張とは正反対の主張を「ものみの塔」が裁判において展開していたということを明らかにしています。

appeal_decision_p.24

次のように述べられています。

「被告側(ものみの塔)は裁判の中で最初から最後まで自分たちにはケンドリック(加害者)からコンティ(被害者)が虐待を受けないように保護するためのどんな行動もとる責任はないと主張している

判決文 24ページ

つまり、裁判の中で明らかになった ものみの塔の弁護主張はスティーブン・レットがtv.jw.org の聴衆に対して主張していたものとは全く異なるものであることが示されています。裁判では「被害者を保護する責任はなかった」と主張しているのに対し、レット氏はインターネットテレビの中で「(被害者を保護していないという主張は)背教者が作り上げた嘘である」と述べました。

lett_tv.jw.orgJW Broadcasting で「背教者の作り上げた嘘」と主張するスティーブン・レット

結論

控訴審では被害者が虐待を受ける点で会衆の活動の中で加害者が監督されていなかったことに関して、ものみの塔の責任が確定しました。しかし、過去の児童虐待の事実に基づいて会衆の成員に対して警告を行う会衆(及び ものみの塔)の責任については否定されました。ここで言う「警告を行う責任」は法的な責任のことで、道義的な責任とは区別して考える必要があります。

警告義務に関して一律で法的な責任を認めることに裁判所が慎重になるのは当然のことと言えます。それは広範囲な影響があり、「厳密な境界線を設けて警告義務の範囲を制限できなくなる」(判決文引用)ことにもなるからです。

しかしながら、一審の陪審員評決が示したように、児童虐待の防止は宗教信条や組織保護のための秘密主義よりも優先されるべきであるという社会通念が存在していることに何ら変わりはありません。

 

今回の判決文の要旨や今回なされていた ものみの塔側の主張については別の記事で解説を入れる予定です。

 

記事の終わり