2014年10月31日に「エホバの証人は1350万ドル(15億円)の損害賠償の支払いを命じられる」というニュースが米国の報道各社から出されました。 ものみの塔協会を相手取った裁判では、これまでカリフォルニア州アラマダで2012年に2100万ドルの賠償金(後日裁判官によって1141万ドルに減額)が認められる陪審員評決が出ています。今回の1350万ドルは2012年に出された1141万ドルと比較すると、さらにそれを上回る非常に高額なものとなっています。

なぜこのような高額な判決が下されたのでしょうか?その大きな理由は今回の裁判が懈怠判決(Default judgment)という珍しい形で終了しているからです。(協会は控訴予定)

懈怠判決(Default judgment)

懈怠判決(かいたいはんけつ)とは被告側が裁判に欠席するなどしたために原告側の主張がそのまま受け入れられて判決が言い渡される判決のことです。米国では民事訴訟において、裁判への供述録取要請や証拠開示手続(ディスカバリー)を被告側が故意に拒絶すると、特別な事情が認められない限り懈怠判決に至る可能性が高くなります。

ところがエホバの証人の統治体のゲリト・レッシュは裁判所からの要請を拒絶し、供述録取に協力することも、児童虐待の方針決定に関わる統治体の関与を示す証拠を開示することにも非協力的な態度を示し審理に入ることになりました。

その結果、ものみの塔協会側は公正な証拠の下に審議を行なう誠意のない被告とみなされ、審理において反論する権利を失い、今回の重い敗訴判決が下ることになりました。

裁判所要請を拒否するゲリト・レッシュ

今回の訴訟において、ザルキン法律事務所は最初の段階から統治体の最も古い成員であるゲリト・レッシュに対して証言を要請していました。ザルキン法律事務所側からはゲリト・レッシュからの供述を得る必要性や根拠が以下のように明確に提示されています。

今回の審理の中で提出された資料から(メールアドレスだけ画像処理)

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2013年9月11日 ジェームズ・マケィブ氏(協会弁護士)へ

・・ゲリト・レッシュ氏に関しては、わたしたちは民事手続き法2026.210 に基づき、「役員、監督、管理代表、あるいは従業員、関係者」として彼の証言を聴取する必要があります。わたしたちはレッシュ氏が統治体の最も古い成員であると理解しています。わたしたちは彼の証言から統治体の構造や機能、そして組織内での方針決定の役割を聞けるものと考えています。児童性的虐待容疑に関連する方針の導入や発展に関して統治体の役割を知る必要があります。統治体によって どのように児童性的虐待の訴えが扱われてきたのか、ゴンザロ・カンポスに関わる質問と同様に知る必要があります。

ディビン・M・ストーリ ザルキン法律事務所

これに対してゲリト・レッシュ側は、この要請に応じず非協力的な態度をとります。そして以下の宣言書を裁判所に提出します。

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わたしゲリト・レッシュは以下の通りに宣言いたします。

・・・

8. わたしは ものみの塔の法人役員や監督、管理代表や成員ではないし、かつて一度もなったことはない。わたしは ものみの塔の日々の運営に指示を与えたこともない。わたしは ものみの塔に対する責任はない。わたしは ものみの塔の方針の決定や ものみの塔の各部門に対して個人として何の権限も持っていない。

・・・10. (a) わたしは ものみの塔の法律部門や米国の奉仕部門に関わったことや監督したことはない。

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 裁判所に対して提出された統治体のゲリト・レッシュの宣言は誠意のないものとされました。法廷に通用しなかったゲリト・レッシュの主張ですが、これはエホバの証人の信者にとっても不誠実どころか偽りさえ含まれているものと感じるのではないでしょうか?

ゲリト・レッシュの立場

もし本当にゲリト・レッシュが、児童虐待に対する対応方針を含め、ものみの塔の方針決定に関わっていないとするならば、それはエホバの証人の信者にとっても衝撃的なことであるはずです。しかし エホバの証人の組織運営を理解している信者であれば、上記の「宣言書」が、単に裁判所の要請を拒否するために考え出した口実に過ぎないということを容易に判別することができるに違いありません。

エホバの証人は2014年7月15日号の ものみの塔誌でゲリト・レッシュが「わたしは統治体の奉仕委員会の援助者に任命され,1994年7月から統治体の成員として奉仕する特権にあずかっています」と語っています。

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そして、統治体の奉仕委員会の役割については 2008年の ものみの塔誌が以下のように述べています。

*** 塔08 5/15 29ページ このように統治体は組織されている ***
■ 奉仕委員会: この委員会の成員は,宣べ伝える業を監督し,会衆,開拓者,長老,旅行する監督に関係する事柄を扱います。また,「わたしたちの王国宣教」の準備を指導し,ギレアデ学校と宣教訓練学校の生徒の招待と卒業後の割り当てを行ないます。

このように ゲリト・レッシュが統治体の奉仕委員会として、米国の奉仕部門を含め世界中の支部や奉仕部門を従わせる立場にあり、監督する権限をもっていることははっきりした事実です。

従って「わたしは ものみの塔の方針の決定や ものみの塔の各部門に対して個人として何の権限も持っていない」「わたしは…米国の奉仕部門に関わったことや監督したことはない」というのは偽りであると言うことができます。

自分ではそれを指で動かそうともしません

ゲリト・レッシュの証言拒否を貫き、結果として ものみの塔の多額の賠償金を命じる敗訴を招くことになりました。この敗訴が決定した場合に、賠償金はどこから支払われることになるのでしょうか? それは「世界的な業への寄付」から支払われることになります。

今回の訴訟対象は「ものみの塔聖書冊子協会」であるため、ゲリト・レッシュに対して賠償金が請求されるわけではありません。ゲリト・レッシュは屈辱を受けるかもしれない供述録取を受けるよりも、懈怠判決によって ものみの塔が敗訴に至る道を選びました。

統治体は最近、エホバの証人の子どもたち向けに学校で自分の立場を明らかにして証言することを励ますビデオを制作しました。その中では「エホバについて はなすのが こわくなったことはあるかな? エホバは どのように たすけてくださるかな?」と述べられています。

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 それに対して、統治体のゲリト・レッシュは自分の立場を偽り、自分は ものみの塔に対して責任を負う立場にないと主張し、証言することを拒みました。

イエス・キリストは当時の宗教指導者に対して次のように語りました。

マタイ 23:4 【彼らは】重い荷をくくって人の肩に載せますが,自分ではそれを指で動かそうともしません。 

今回の裁判で示したゲリト・レッシュの態度と異なるところがあるでしょうか?

 

 

記事の終わり