以下の記述は西暦1世紀頃の文書と考えられている「聖書古代史」(ラテン語のテキスト)の日本語訳の一部です。これはフィロンの文書のラテン語訳と一緒に見つかっていたため、フィロンの作と考えられていました。現在はフィロンではないと考えられていますが、フィロンに近い西暦1世紀頃の文書と考えられています。

この文書の中には聖書には出ていないエフタの娘の名前や、エホバがエフタの娘が犠牲になることを導いたことなどが記されています。

そして聖書の中と一致している点ではエフタの娘の死に関連する習慣、つまりエフタの娘の死を「イスラエルの女らは大いに悼む」習慣が存在していたことが記されています。

聖書古代史 39:10-40:9 作者不明(偽フィロン)

アンモンの子らの王はエフタの声に聞き従おうとしなかったので、エフタは立ち上がり、民全員が出て行って準備万端で戦えるよう彼らを武装させて、言った。「アンモンの子らが私の手に渡されて私が戻ってきたとき、最初に私を出迎えたものはどんなものでも主のために全燔祭の捧げ物となるである」。主はお怒りになっておっしゃった。「見よ、エフタは最初に彼を出迎えたものをどんなものでも私に捧げると誓った。今もし犬が最初にエフタを出迎えたなら、犬が私に捧げられるのだろうか。今エフタの誓いは彼の初子において、つまり彼自身の胎の実において成就するがよい。そして彼の願いは彼に一人娘において成就するがよい。しかし私は今このとき、私の民を解放するであろう。彼のためにではなく、イスラエルが祈った祈りのために」。

エフタは行ってアンモンの子らを攻めた。そして主は彼らを彼の手にお渡しになり、彼は彼らの六〇の町を撃った。エフタは無事帰り、女たちが彼を迎えに踊りながら出て来た。彼には一人娘があり、彼女は自分の父を迎えに真っ先に家から踊りながら出てきた。エフタは彼女を見ると、気を失いそうになって言った。「お前の名がセイラと呼ばれたのももっともだ、お前が犠牲としてささげられるようにと。今、誰が私の心を天秤に、私の魂を秤にかけるであろうか。そうすれば私は立ってどちらがより重いか見るであろう、生じた喜びのほうか、それとも私に降りかかる悲しみのほうか。私は誓いの歌で私の主に対し口を開いたのだから、それを呼び戻すことはできない」。彼の娘セイラは彼に言った。「民が解放されたのを見ていながら、誰が死ぬのを悲しみましょうか。あるいは父祖たちの時代に起きたことをお忘れですか。あのとき、その父親は息子を全燔祭の捧げ物として置き、彼[=息子]は彼に逆らわず喜んで彼に同意しました。そして捧げられようとしていた者は準備ができており、捧げようとした者は喜んでいたのです。今、あなたが誓ったことはどれも取り消してはならず、実行してください。けれど、私は死ぬ前にあなたに一つだけお願いを申し上げます。魂をお返しすることに痛みを覚えるのでもありませんが、父が誓いによって罠にかかったことが悲しいので、私は犠牲のため自らを自発的に捧げたとはいえ、私の死に意に適わないのではないか、あるいは私は魂を空しく失うことになるのではないかと私は恐れています。こういったことを私は山々に告げ、その後戻るでしょう」。彼女の父は言った。「行きなさい」。

エフタの娘セイラは出発した、彼女と彼女の友達の娘たちは。そして民の賢人たちのところに来て語ったが、誰も彼女の言葉に答えることはできなかった。その後彼女はテレグ山に来た。主は夜、彼女についてお考えになり仰せになった。「今や見よ、私はこの世代における私の民の賢人らの口を封じた。彼らがエフタの娘の言葉に答えることができないように。それは私の言葉が成就されるため、また私が考えた計画が覆されることのないためである。私は彼女がその父よりも賢いのを、またここにいる賢人全員よりも娘のほうが思慮深いのを見た。今、彼女の魂はその願いによって与えられよ。彼女の死はいつまでも私の前に貴いものとなろう。彼女は去って死に、その母たちの懐に収まるであろう」。

エフタの娘はテレグ山に来ると嘆き始めた。そしてこれが彼女の哀悼歌である。彼女は逝く前にその哀悼歌でもって悲しみ、身の上を嘆いて言った。「聞いてください、山々よ、私の哀悼歌を。見てください、丘よ、私の目の涙を。証人になってください、岩々よ、私の魂の嘆きの。見よ、私はどのような試練に遭わされていることか。でも、私の魂が空しく取られることはありませんように。私の言葉が天まで届き、私の涙が蒼穹の前に記されますように。すなわち、父は犠牲に捧げると誓った娘を説き伏せているのではない、と。支配者は犠牲にするよう約束された彼の一人娘の言うことを聞き入れている、と。

私は私の夫婦の部屋によって満ち足りたことはなかったし、私の婚礼の花輪で満たされたこともありませんでした。私の高貴さにふさわしく華やかに装ったことはありませんし、香油を用いたこともなく、私のために準備された塗油を私の魂が享受することもありませんでした。ああ母上、あなたが一人娘を産んだのも空しいことでした。なぜなら陰府が私の夫婦の部屋になったからです。私の香料と、あなたが私のために準備してくださった香油の調合物すべては地面に注がれるがよい。そして母が織った白い衣を衣蛾が食い、私の乳母がその時のために編んだ花輪はしおれるがよい。青と紫で私の枝が織り上げた[寝台の]上掛けを衣魚が台無しにするがよい。私の友達の娘たちは何日も私について嘆いて語り、私のことを悼んでくれますように。木々よ、枝を垂れて私の若さを嘆いてください。森の獣よ、来て私が処女のままであることに呻き声を上げてください。なぜなら私の年月は断ち切られ、私の人生の時は闇の中で老いるでしょうから」。

こう言うと、セイラは父のもとに帰った。そして彼は誓ったことをすべて行い、全燔祭の捧げ物を捧げた。それからイスラエルの娘たちはみな集まり、エフタの娘を埋葬し、彼女を悼んだ。イスラエルの女らは大いに悼み、その月の一四日目に毎年集まって四日間エフタの娘を悼むことに決めた。そして彼らは彼女の墓の名をその名にちなんでセイラとした。エフタは一〇年間イスラエルの子らを裁いた。彼は死んで、自分の父祖と共に埋葬された。

聖書古代誌―偽フィロン (ユダヤ古典叢書) – 教文館から

 

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